いつか誰かとじゃなくこの夏に夢を見るのさ

ブログのタイトルは、HiHi Jets・美 少年の「おいで、Sunshine!」の一節です。

1日だけ幕が開いたミュージカル「SUPERHEROISM」が本当にヒーローだった話

新型コロナウイルス感染症の影響で、2020年3月23日18:30開演、この1公演しか幕が上がらなかったミュージカル「SUPERHEROISM」を観た話です。

私はもともとこの舞台をブログにまとめるつもりはありませんでした。ジャニオタになって1年ちょっと。「記憶がどんどん薄れていくのが悲しい」「Twitterやインスタじゃなく、きちんと感想をどこかに残しておきたい」と思いながらも、Twitterに連投することや、オタクと爆トークすることで満足してきました。

しかし今回「SUPERHEROISM」を観て、ふと「ここにいる400人弱しか、この舞台を観られなかったのか」と思ったら、これは残しておかなくてはという気持ちになりました(そのわりに時間が経ってしまったけど)。言っておきますが、私は世のオタクの皆さんのように面白い文章力や語彙力、勢いは持ち合わせておりません。また舞台やミュージカルの専門的な知識もありません。だからどんな文章になるかは、私にもわかりません。ただあの舞台を、客席で観た1人として、思い出せる限りを、自分の偏った視点で綴ります。前書きが長くなりすみません、ここから始まります。

サマステで初めてダンスを生で見て「私の大好きなかいちゃん(髙橋海人くん)のダンスだ」と思ったことがきっかけで好きになった佐々木大光くん。気がつくといつも写真を買ってしまう中村嶺亜くん。私は7 MEN 侍の担当というわけではないのですが、好きな2人の初の外部舞台ということで気になって申し込みました。このところ仕事を全然してくれていなかったJr.情報局が突然仕事をしてくれて、3月23日のチケットが当選しました。

しかし……
3月10日、大阪公演の開催自粛が発表される。
3月20日、東京公演のうち3月20日~22日までの開催自粛が発表される。
3月22日、翌23日からの公演再開が発表される。
そして3月23日17:30。3月25日〜29日の公演自粛が発表される。24日はもともと休演日だったため、この舞台が、この日の1公演のみであることが決定する。

18:00に待ち合わせをしていた私と友達は、会ったときにはもう複雑な気持ちでした。せっかく初めましてのお友達と会えたのに、マスク姿なうえに浮かない顔。複雑な気持ちのまま、会場である品川プリンスホテル クラブeXへ向かいました。

会場は3密を避け、万全の衛生対策がされていました。おでこにピッとやるタイプの検温、アルコール消毒(置いてあるだけじゃなくて「アルコール消毒してください」と指示される)、自身でのチケットもぎり(係の方がチケットを確認してくれて、自分でもぎって半券をボックスに入れる)、終演後は少人数ごとの退場。この体制にするために検温機(?)やアルコール消毒の導入費用などもかかっているはずで、1公演じゃ絶対に賄えないよなあと、そこでも悲しい気持ちになりました。グッズはパンフレット1種。少しでも何かの足しになればという気持ちになりながら購入しました。

会話があまりできないので、異様な静けさに包まれる会場で開演を待ちました。場内をぐるりと見渡し、「今ここにいるだけの人しか、この舞台を見られないのか」と寂しさや悔しさと同時に、唯一の1公演の目撃者となる、使命感のようなものも感じたのを覚えています。

そして開幕。舞台はアメリカンテイストの派手なスーパーマーケット「HEART BEAT MARKET」。そこへ中村嶺亜くん演じるゴタンダがアルバイトとして働き始め、愉快な店員たちと愉快な日々を過ごす――

セットや衣装はポップでキュート、ストーリーも音楽も軽快で、底抜けに明るくて面白くて。

それは、しんみりとした気持ちで開演を待っていた私たちの杞憂を一気に吹き飛ばしてくれる、すごく明るくてハッピーな作品でした。正直、キャスト(特に嶺亜くん)が舞台に現れた瞬間はちょっと泣きそうになったし、実際に涙を流しているファンの方の姿もありました。「1公演だけなんて悔しいよね」と自担の気持ちに寄り添ってしまうのがオタクの性だけど、そんなオタクの性を忘れさせてくれたのも自担でした。(私の場合は担当とは呼べないけれど。)

1公演しかないので、どれがアドリブかもわからないけれど、アドリブなんじゃないかと思ってしまうようなノリのいい掛け合いがいくつもあり、演技ではなくて思わず本当に笑ってしまっているような、心の底からの笑顔がたくさんありました。生鮮チーフ・サエグサ役の鳳翔大さんが終演後に「私たちも改めて舞台に立つ楽しさを噛み締めた」とおっしゃっていたけれど、本当にキャストの皆さんも楽しそうでした。

嶺亜くんはちょっと緊張しているようだったけど、舞台の上でもアイドル全開のキュルキュルなお顔で、手練れのキャストさんに囲まれてのびのびと歌って踊っていました。大光くんはいつもの“狂犬”を封じて、ちょっとおどおどした客・ピーマンを怪演。私が大好きなダンスも素敵なシーンで見られて、思わず私が大光くんに恋しちゃうところでした。舞台の上で2人はあくまでも同じカンパニーのうちの2人という感じだったけれど、嶺亜くんと大光くんが2人で歌うところでは「やっぱり2人は同じグループなんだな」と感じてグッときました。ずっと緊張していた2人が、このときだけはちょっと安心していたように見えた……のはオタクの妄想かもしれないけれど。

もちろん他のキャストさんたちもとっても素敵でした。中でもレジアルバイト・チサ役の中村麗乃さん(乃木坂46)は看板娘の役どころがぴったりなキュートさで、しかもお歌もすっごく上手。思わず聞き惚れてしまいました。「HEART BEAT MARKET」の店長役で、普段のツイートからも嶺亜くんと大光くんを温かく見守っているのが伝わってきたなだぎ武さんはいちいちが面白くってさすがでした。私なんかが感想を言うのを恐れ多いくらいですが。

終幕の頃には、あれだけしゅんとしていた客席が、すごく明るいムードで満ち満ちに。コロナ禍で混乱していて、観劇に行くのもちょっとためらわれるような時期に、こんなに明るい舞台を見せてもらえて、私はすごく幸せだと思いました。「ありがとう」とか「感動した」とか、「楽しかった」とか「大好き」とか、たった数文字の言葉さえ声にして贈ることの許されない環境だったから、全部の気持ちを拍手に込めた。きっとみんな同じ気持ちだったんだろうな、会場には驚くほど大きくて温かい拍手が広がっていました。大げさじゃなく、こんなに気持ちのこもった拍手は人生で初めて聴いた気がしました。

初日と千秋楽にしか予定されていなかったカーテンコール。出てきたキャストさんはみんな「悔しい」と口に出して、涙を滲ませていました。感動の涙じゃなくて、「1公演しかできない悔しさの涙」なんて聞いたことがない。悔しかった。思い出すだけで今でも泣ける。あんな涙はもう二度と見たくない。

でも大光くんと嶺亜くんは涙を流しませんでした。大光くんはいつもの佐々木大光に戻っていて、なんか素っ頓狂なことを言って(なんて言ったか忘れちゃった)全員を笑わせてくれた。嶺亜くんはとびっきりの嶺亜スマイルを見せてくれて、それから、本来だったら観客に向けてやるであろう「また見たいですかー?」というコールを、自身が客席側に立ってキャストに向かってやってくれた。こんなところにまで気を遣える初座長はいるんでしょうか。初主演、初座長。悔しいはずがない。ジャニーさんは「舞台で涙を流すな」と教えていると誰かが言っていました。嶺亜くんと大光くんが涙を流さなかったのは、この教えが彼らの中に根っこを張っているからなんだろうな。でもあの日、あの舞台で2人が涙を流さないどころか、ずっとニコニコしてくれていたのは、本当に救いでした。おかげで、すごくほくほくした気持ちで帰路につけた。

「HEART BEAT MARKET」という作品は、ヒーローに憧れているゴタンダが、日常のひとこまでヒーローになるお話です。こんな混乱のさなか、笑いと元気をくれたこの作品自体が間違いなくヒーローだったし、特に最後まで笑顔を絶やさないでいてくれたアイドル2人は、本当に本当に私のヒーローでした。(そういえば中村麗乃ちゃんも泣かなかったな。ずっとニコニコしてた!)

カーテンコールでキャストの皆さんが再演を約束してくれました。初日が延びていくたびに小道具にもいろいろ手が加えられていっていたそうなので、きっと再演する頃にはキャストの皆さんもセットも、もっともっとパワーアップしているんじゃないかな。パワーアップしたあのスーパーマーケットに、またお買い物に行きたいな。明るくて面白い、あの店員さんたちから、愛を買いたい。

 

一気に書き上げた今日。ちょうど23日のチケットの払い戻しを希望していた人宛のメールが届きました。なんてことないけれど、ちょっとした偶然に驚きながら拙い文章を締めます。

最後に、舞台写真が掲載されているので、公式のTwitterを貼っておきます。

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